【研究者】
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 松田裕貴講師
(助成時所属)奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科/助教
【研究テーマ】
珠算行動の認識による学習者支援システム
【研究期間】
2021年4月〜2024年3月
【研究報告サマリー】
算盤(そろばん)を用いた計算能力の習得には長期に渡る繰り返し学習が必要であることが知られている。この課題を解決するために、本研究では市販の算盤を用いる珠算学習を対象としたICT珠算学習支援システムの研究開発を行った。システムの実現に向けて、次の2つの技術を確立した。
まず1つ目の技術として、書画カメラによって得られる計算中の算盤の俯瞰映像から珠画像を抽出し、珠の状態を画像分類モデルによって推定することに基づきリアルタイム・高精度に算盤の盤面(入力値)を認識する手法を確立した。評価実験を通して算盤上に入力された7桁の数値を98.6%の正解率で推定できることを確認している。2つ目の技術として、盤面の認識結果に基づいて計算問題を卓上ディスプレイに提示し、計算誤りが発生した場合に動的に指摘する機能や苦手な操作をログとして記録する機能を有するインタフェースを開発した。
【本助成にかかわる成果】
<論文誌・ジャーナル>
Yuki Matsuda: “Abacus Manipulation Understanding by Behavior Sensing Utilizing Document Camera as a Sensor,” International Journal of Activity and Behavior Computing, Vol.2024, No.1, pp.1-16, 2024.
<国際会議>
Yuki Matsuda: “A Table-top Interface for Real-time Coaching in Abacus Learning,” The 10th International Conference on Smart Computing (SmartComp ’24, Demo), pp.243-245, 2024.
(夏頃に公開される予定)
<国内研究会>
- 小嵜泰造, 松田裕貴: “珠算学習における計算結果の逐次分析による苦手操作検出手法の提案,” 社会情報学会関西支部研究会(SSI)/ 社会システムと情報技術研究ウィーク(WSSIT ’24), pp.1-8, 北海道虻田郡, 2024年3月.
- 小嵜泰造, 松田裕貴: “算盤の苦手操作克服のためのゲーム要素を用いた珠算学習支援手法,” 第31回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS ’23), pp.267-272, 富山県高岡市, 2023年10月.【優秀デモンストレーション賞】
- 松田裕貴: “珠算学習支援のための盤面認識に基づくリアルタイム情報提示手法,” マルチメディア, 分散, 協調とモバイル(DICOMO 2023)シンポジウム論文集, pp.63-67, 富山県富山市, 2023年7月. 【野口賞(デモ賞)】【優秀プレゼンテーション賞】
- 小嵜泰造, 松田裕貴: “算盤学習支援システムのための深度カメラを用いた珠操作の認識,” マルチメディア, 分散, 協調とモバイル(DICOMO 2023)シンポジウム論文集, pp.57-62, 富山県富山市, 2023年7月.
- 松田裕貴: “書画カメラを用いた珠算行動センシング,” 電子情報通信学会技術研究報告, センサネットワークとモバイルインテリジェンス研究会(SeMI), Vol.123, No.31, pp.70-75, 沖縄県国頭郡, 2023年5月.
<特許>
松田裕貴:“算盤センシング装置、方法、及び珠算学習情報提示システム,”特願2023-059640(2023年3月出願).
<特集・解説>
松田裕貴: “ICTそろばん学習支援システム「AbaCaaS」,” 電気計算 2024年6月号, Vol.92, No.6, pp.51-56, 2024.
<展示会>
- けいはんなR&Dフェア2023, 身近なモノをIoTに!そろばん学習からゴミ拾いまで(2023.10.06-07開催)
- 大学見本市2023〜イノベーション・ジャパン, AbaCaaS: ICTそろばん学習支援システム(2023.08.24-25開催)
- Maker Faire Kyoto 2023, AbaCaaS:珠算センシングシステム(2023.04.29-30開催)
【本助成についての感想】
本研究に対して研究助成をいただき心より感謝いたしております。研究期間を通じて、実際に動作する珠算学習支援システムを実現することができ、英文論文誌をはじめ多数の研究成果につながりました。さらに、展示会などでの成果の公表やコア技術の特許申請なども行うことができ、現在は実際の算盤教室との連携によって実際の学習者とともに検証を行う段階に発展しております。本研究助成を起点に、ICT算盤学習支援という新たなフィールドを切り拓くことができたと考えております。今後も社会実装にむけて研究開発を進めていきたいと思います。