長崎県の対馬において、2024年10月に試験を行い、2025年1月より稼働を開始した「衛星通信システムを用いた遠隔監視カメラ」により、冬季対馬に避難をしてくる海鳥のオオハム、シロエリオオハム、アビの保護を目的とするプロジェクトを進めています。このシステムは24時間体制でリアルタイムの映像を提供し、従来の定期巡回では困難だった夜間や悪天候時の監視を可能にしています。
2月7日には本監視カメラを設置する砂浜において、1羽の漂着を確認しております。ただ、この1羽については、かなり衰弱した状態で浜に辿りついた模様で、残念ながらその後死亡し、その亡骸を回収することとなりました。一方2月13日には、同砂浜から14kmほど離れた別の浜にも油汚染による被害を受けながら1羽のシロエリオオハムが漂着をし、地元の方の連絡を受けNRDA Asiaの先生により無事保護がされ、応急処置や栄養補給を受けた後、空輸により長崎に運ばれ獣医による除染や回復に向けての処置を施した後、2月19日に監視装置のある砂浜で放鳥され自然に返っていきました。
本プロジェクトで導入された監視システムは、即時の状況把握と迅速な対応を可能にするだけでなく、収集されたデータは海鳥の行動パターンや環境変化の分析にも活用が期待されます。さらに、砂浜での監視カメラを活用した保護活動の様子が、対馬の地元の皆さんにも広く認知され、今回のように監視カメラの設置していない浜に漂着をした海鳥に対しても、その保護の意識が浸透してきている様子です。
このようにICT技術を活用した新しい野生動物保護の取り組みは、海鳥の生存率向上に直接貢献するとともに、得られたデータを環境保護活動に活かし、さらには地域社会の自然保護意識の向上にも繋がっています。今後も技術革新を通じて、より効果的な環境保護活動のモデルケースとなることを目指してまいります。

△観測中の砂浜

△別の浜で保護されたシロエリオオハム(アビ目アビ科)

△観測中の砂浜の海岸から自然に返るシロエリオオハム