活動報告

【調査研究助成】立命館大学大学院 楊 雨双さんの研究報告サマリーをご紹介します。

【研究者】
立命館大学大学院 社会学研究科/ 博士後期課程  楊 雨双さん

【研究テーマ】
女性差別に対抗する社会運動におけるICTの応用

【研究期間】
2023年4月1日~2024年3月31日

【研究報告サマリー】
本研究は社会文化と実践に埋め込まれる女性差別に対抗する社会運動の事例に着目し、参加者がいかにICTsを利用してフェミニスト・コミュニケーションを行っているのかを明らかにする。
研究では、デジタルメディアが社会運動に果たす役割とICTs技術にまつわるフェミニストの論争を理論枠組とした。それを踏まえ、フェミニスト・アクティビストが様々な構造的制限を見渡しながら、ICTsをベースにしたメディアをいかに創造的な方法でアクティヴィズムを営むのかを検討する重要性を見出した。


【本助成にかかわる成果】
本研究は「コミュニケーションのレパートリー」(Mattoni, 2013)という概念を用い、日本におけるフラワーデモとイギリスのEveryday Sexismの事例を調査した。調査から得られた結果として、

(1) メディア知識の実践、つまりメディア・コンテンツを受信し、反応し、批判し、独自のメディアコンテンツを生成する方法といった側面において、社会運動参加者が異なるICTs技術に高度な適応力と創造力を示した。

(2) 関係的メディア実践においては、異なるトピックに関して、その両者の相互作用に拒否、攻撃、適応、代替(Rucht, 2004)といったパターンが現れた。


【本助成についての感想】
ICTsが社会運動に果たした役割について社会運動研究においてよく論じられてきたが、主に社会運動の形成、発展、および結果に対する機能的な議論に焦点が当てられる。それに対して、メディア研究とフェミニストコミュニケーション論と交差し、ICTsが社会運動に占める位置を引き続いて検討する必要があると考えられる。
研究助成のおかげで、調査が実現しただけでなく、イギリスにて海外の研究者からこの研究プロジェクトにコメントをいただき、研究を進めることができました。博士院生である私にとって、学外の研究助成金をいただくことは、何より大きいな励みになりました。このような貴重な機会に対して、改めて感謝を申し上げます。