【研究者】
京都大学医学部附属病院 上床 輝久 助教
【研究テーマ】
スマートフォン認知行動療法の効果機序解明
【研究期間】
2019年4月1日~2022年9月30日
【研究報告サマリー】
うつ病予防において認知行動療法(CBT)は多くの臨床試験で有効性が確認されており、診断閾値下のうつ状態において症状を軽減するとされている。
研究グループでは2017年にスマートフォンを利用したCBT(iCBT)アプリケーションを開発し、無作為割り付け比較試験によって、その有効性を確認した。一方で、複数のスキルの組み合わせからなるiCBTにおいて、それぞれのスキル単独あるいは組み合わせにおける効果機序は明らかではなかった。
本研究では、うつ症状を有する大学生1093人を対象とした大規模な要因試験を実施し、8週間のプログラムにより、うつ症状の有意な減少および2つのスキルの有意な向上を認めた。一方でうつ症状の減少と有意に相関する特定のスキルの組み合わせは認めなかった。
今後、iCBの効果機序を解明するためには、スキルの数やアプリケーションにおける提示方法等を緻密に設計し検討することが重要であることが示唆された。
【本助成研究にかかわる成果】
・Components of smartphone cognitive-behavioural therapy for subthreshold depression among 1093 university students: a factorial trial /Evidence-Based Mental Health
・Validation of the Japanese Big Five Scale Short Form in a University Student Sample /Frontiers in Psychology
・Development and validation of the Cognitive Behavioural Therapy Skills Scale among college students /Evidence-Based Mental Health
【本助成についての感想】
貴財団からの助成により本研究成果をご報告できたことに深く感謝いたします。新型コロナウィルス感染拡大の中、研究計画の変更をはじめとした様々な困難がありましたが、貴財団事務局の皆さまにも支えられ、当初の計画を完遂できました。本研究成果をもとにさらなる研究を推進し、情報技術によって社会課題を解決し、より良い社会の礎となるエビデンスの創出に励んでゆく所存です。