【研究者】
立命館大学 情報理工学部 岩居 健太 助教
【研究テーマ】
非線形再帰フィルタの拡声通話機器への応用
【研究期間】
2019.4.1〜2022.3.31
【研究報告サマリー】
拡声通話における音響エコーの問題の解決法として、音響エコーキャンセラ (AEC) がある。AECは適応フィルタで音響エコーのレプリカ信号を生成し、音響エコーを抑圧する。しかし、現存するAECは線形適応フィルタを利用しており、スピーカに起因する非線形歪みの発生により性能が低下する。この非線形歪みの影響を考慮した非線形エコーキャンセラは、演算負荷などの問題があり、実用化されていない。そこで、本研究では非線形IIRフィルタの非線形AECへの応用を検討した。
非線形IIRフィルタは再帰構造を有する演算量の少ない非線形フィルタであり、スピーカの非線形歪みを低減できる。本フィルタを非線形AECに応用することで、非線形歪み発生時でも効果的に音響エコーを抑圧できる。本フィルタと既存の線形AECを併用することで、既存の非線形AECに比べ少ない演算量で従来以上の性能を実現した。また、本フィルタ単独による非線形AECの構築を目指し、非線形IIRフィルタの一般表現を導き、その妥当性を計算機実験により示した。
【本助成研究にかかわる成果】
・ 第34回 信号処理シンポジウム(光レーザマイクロホンを用いたフィードフォワードANCシステムの検討)
・Audio Integrated Active Noise Control System with Auto Gain Controller
・非線形IIRフィルタの非線形音響エコーキャンセラへの応用
・第35回 信号処理シンポジウム(コヒーレンス調整フィルタによるフィードフォワードアクティブノイズコントロールシステムの騒音低減量改善の一検討)
・Study on Feedforward Active Noise Control System with Optical Laser Microphone to Detect Reference Signal with Short Delay
・Feedforward Active Noise Control with Coherence-Adjusting Filter for Improving Noise Reduction Performance under Low-Coherence Condition
・動電型スピーカの非線形特性の非線形IIRフィルタによるモデリング
・第36回 信号処理シンポジウム(アレイ信号処理と応用 (Sensor Array and Multichannel Signal Processing))
・A Study on Optimal Filter of Feedforward Active Noise Control System Based on Analysis of Frequency Response
・Formulation of Multidimensional Frequency Characteristics of Second-Order Nonlinear IIR Filter
【本助成についての感想】
初めに、貴財団の助成により、本研究を遂行することができたことを大変感謝いたします。特に、2020年初頭より、COVID-19が猛威を振るうようになり、奇しくも本研究の対象となる拡声通話機器によるオンライン会議の普及が進んだ。本研究の意義がますます増えていく中、貴財団の援助のもとで社会的、産業的価値のある研究を遂行できた。十分な研究資金、使途の制限の少なさは、大変ありがたく思いました。最後に研究遂行にあたり、事務的な手続きを進めていただきました貴財団の職員の皆様に感謝いたします。