【研究者】赤瀬 歩(あかせ あゆみ) 一橋大学大学院 社会学研究科 総合社会学専攻
【研究テーマ】インド人IT技術者の海外就労と仮想就労の構造的連関
【研究期間】2018年4月1日〜2019年2月28日
【サマリー】新自由主義に基づく資本主義的市場経済においては、市場と利益の拡大を追求する国家や多国籍企業による国際労働市場での高度人材の蓄積と活用の実践があり、先進諸国は新興国の「高度な人的資本」をめぐって、人材獲得競争と蓄積を繰り広げている。物理的な労働力の形態に限らず、仮想プラットフォーム上で人的資本がグローバルに統合される今日においては、ますます仮想的な労働力を送り出す国・受け入れる国の双方にもたらす経済・社会文化的影響に着目しなければならない。本研究では、IT革命により高度IT人材の国際労働移動の恩恵に浴しているインドを対象に、国際的なIT産業界に広がる21世紀型の国際労働移動の変容として、インドで拡大した海外向けのオフショア・アウトソーシングに従事するインド人IT技術者の仮想就労(オフショア労働)と、伝統的な就労先である米国の海外就労(オンサイト労働)との相互連関的構造を明らかにした。インドと米国間の労働力や知識の還流の仕組みと促進のメカニズムに取り巻かれるIT技術者の社会的適合性に関する考察は、仮想就労を通して高度人材の労働サービスを提供する他の送出国にとっても、母国開発を前提とした循環型移民政策の意義を問い直すための参考研究となること、また今後インドからの高度人材受け入れが拡大すると予想される日本の高度人材の研究分野においても、高度人材に関する課題の把握と適切な施策を検討する上で、インド人IT技術者の就労環境の特性に対する理解の向上への貢献となることを期待している。
*10か月で現地でのフィールドワークを含めた精力的な研究活動を実施されました。赤瀬さんの今後のますますの活躍を期待いたします。